category:synecdoche

提喩・シネクドキ (synecdoche)

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提喩

Hypernyms
Synonyms synecdoche, broadening, narrowing
Hyponym
Definition

提喩 (synecdoche) は、一般的なものごとを示すことによって特殊なものだけを表す、あるいは逆に、特殊なものごとを示すことによって一般的なものごとを表す表現。

Prototype, Schema, and Extension

提喩の典型例は、あるカテゴリーの成員一般をその特殊例で表す、あるいは反対に、ある特定の事物をより一般的な類で表す表現である (小松原 2018) 。

  • (1a) 昼ごはん
  • (1b)

前者の場合、つまり一般を特殊で表す提喩の例としては、「昼ごはん」における「ごはん」の用い方が挙げられる。「ごはんとおかず」の「ごはん」の意味と比較すると分かるように、ここでは語の適用範囲が文字通りの意味 (i.e. 米飯) よりも拡大された意味 (i.e. 食べ物一般) で用いられている。また、後者の場合、つまり特殊を一般で表す提喩の例としては、「花見」における「花」の用い方が挙げられる。ここでの「花」は、「花と野菜」のような場合の「花」とは異なり、桜という特殊例だけを表すという点で、文字通りの意味よりも縮小された意味で用いられている。

Functions

提喩 (synecdoche) という用語に対応する言語現象の範囲は、歴史的変遷の中で大きく揺らいできた (Nerlich 2010) が、全体 (whole) の代わりに部分 (part) を、あるいは種 (species) の代わりに類 (genus) を用いること、あるいはその反対を用いること (Lanham 1991: 148) という定義が、修辞学における提喩の標準的な定義として採用されてきた。

部分全体の提喩は、部分で全体を表す (2a) のような例と、全体で部分を表す (2b) のような例に分けられる。 (2a) では「屋根」だけでなく全体としての家の並びが問題になっている。これに対して (2b) では壁や窓などが捨象され、ノックする戸だけが問題になっている。

  • (2a) 石畳の並木道には、赤い屋根が並んでいる。
  • (2b) 職員はお年寄りのを、一軒一軒ノックして回った。(小松原 2018: 25)
  • (3a) 片栗粉を使ってもちもちのわらび餅を作ることができます。
  • (3b) 夕食後には必ず甘いものを食べます。(ibid.)

同様に、類種の提喩は、種で類を表す (3a) のような例と、類で種を表す (3b) のような例に分けられる。ここでいう類と種とは、一般的な分類と特定の事例という程の意味である。(3a) のように、「わらび餅」はデンプンと水、砂糖から作る和菓子の総称として用いることができるが、厳密にはわらび粉を用いるものが本来のわらび餅である。(3b) の「甘いもの」は菓子類だけを指しており、「甘いもの」と苦いものを対比する場合とは異なり、砂糖やみりんなど、甘味を感じさせる調味料のたぐいは除外されている。

提喩とは何かを明らかにする上で、提喩を、換喩・メトニミー (metonymy)の下位カテゴリーとみなすかどうかがしばしば問題になる (Zhang 2016: 18-20)。典型的な換喩の用例は、有段者を「黒帯」、陶器を「九谷」と呼ぶような表現 (佐藤 1978: 121) であり、ここに共通するのは、ある存在の代わりにそれと何らかの近接性 (contiguity) をもつ他の存在に言及している点である。この「何らかの近接性」の中には、部分全体の関係が含まれるという点で多くの論者が一致しており (e.g. 佐藤 1978, Lakoff and Johnson 1980, Seto 1999, Peirsman and Geeraerts 2006)、(2) のような部分全体の提喩は、換喩に含まれると考えられている。しかし、(3) のような類種の提喩が、換喩に含まれるかどうかという点では意見が分かれている。

一方では、類種の提喩は、換喩とは独立した別のレトリックとみなすべきであるとする説がある (佐藤 1978: 138-175, 籾山 1998: 71-75, Seto 1999)。佐藤 (1978) の主張を受け、この説を最も尖鋭に打ち出している Seto (1999: 91-92) は、現実世界におけるある存在 (entity) と別の存在の間の時空間的な近接関係を基盤とする指示的転移である換喩とは異なり、提喩は、より広いカテゴリー (category) とより狭いカテゴリーの間の意味的な包摂を基盤とする概念的転移であり、類種の提喩は換喩から完全に独立していると述べている。

他方では、類種の提喩と、換喩の境界線は明確ではないとする説がある (Radden and Kövecses 1999: 34-35, 谷口 2003: 124-126, Peirsman and Geeraerts 2006: 301-308)。Radden and Kövecses (1999: 34) は、提喩を特徴づけるのは類種の関係であると述べつつ、カテゴリー階層の構造は、比喩的 (metaphorically) に部分全体構造として概念化される場合があるため、両者を明確に区分することは難しいと主張しており、類種の提喩は換喩の下位カテゴリーとみなされている。

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2019/06/29 18:23Ayumi Tamaru
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最終更新: 2019/10/07 16:01