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piece:akut000009208889-arua
「或阿呆の一生」 - バックリンク
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先ほどの文書にリンクしている文書のリストです。
「本といふよりも寧ろ世紀末それ自身だつた」
「薄暗がりと戦ひながら」
「本はおのづからもの憂い影の中に沈みはじめた」
「本は影の中に沈みはじめた」
「それは丁度卵の白味をちよつと滴らしたのに近いものだつた」
「彼は医者の目を避ける為に硝子窓の外を眺めてゐた」
「桜は彼の目には一列の襤褸(ぼろ)のように憂鬱だつた」
「耳を切つた和蘭人が一人鋭い目を注いでゐた」
「人生を見渡しても何も特に欲しいものはなかつた」
「腐敗した杏の匂に近い死体の臭気は不快だつた」
「彼の答は心の中にあつただけだつた」
「鉄道工夫が鶴嘴(つるはし)を上下させながら」
「雨上りの風は彼の感情を吹きちぎつた」
「彼は歓びに近い苦しみを感じてゐた」
「彼は薔薇の葉の匂のする懐疑主義を枕にしながら」
「人生は二十九歳の彼にはもう少しも明るくはなかつた」
「見すぼらしい町々の上へ反語や微笑を落しながら」
「かう云ふ人工の翼を太陽の光りに焼かれた為にとうとう海へ落ちて死んだ昔の希臘人も忘れたやうに」
「盛り土の上には神経のように細ぼそと根を露はしてゐた」
「唐黍は傷き易い彼の自画像にも違ひなかつた」
「彼女の顔は月の光の中にいるようだった」
「それはどこか熟し切った杏の匂に近いものだった」
「殊に彼を動かしたのは十二三歳の子供の死骸だった」
「それは彼自身には手足を縛られるのも同じことだった」
「同時にまた彼の七八年前には色彩を知らなかったのを発見した」
「彼と才力の上にも格闘出来る女に遭遇した」
「彼はこう天使と問答した」
「それは歓びだったが、同時にまた苦しみだった」
「通り越しさえすれば死にはいってしまうのに違いなかった」
「あらゆる善悪の彼岸に悠々と立っている」
「ルツソオの懺悔(ざんげ)録さえ英雄的な嘘に充ち満ちていた」
「丁度昔スウイフトの見た木末から枯れて来る立ち木のように」
「言わば刃のこぼれてしまった細い剣を杖にしながら」
最終更新: 2024/01/20 18:15 (外部編集)