ex:a1762

「声は一様につぶれ人間の声のようではなかった」

「声は一様につぶれ人間の声のようではなかった」

Page Type Example
Example ID a1762
Author 坂口安吾
Piece 「白痴」
Reference 『坂口安吾』
Pages in Reference 287

Text

何本目かの煙草を吸っているうちに、遠く彼方に解除の警報がなり、数人の巡査が麦畑の中を歩いて解除を知らせていた。彼等の声は一様につぶれ、人間の声のようではなかった。

Context Focus Standard Context
人間の声 (彼等の声)

  • 「彼等」は人間であるため、人間の声をもつ、という常識的な前提をくつがえすだけで、具体的に何の声のようであるかは述べられていない。[[人間のようだ]ない]の解釈ではなく、[[人間ではない]ようだ]の解釈。否定辞の繰り上げが見られる。

Rhetoric
Semantics

Source Relation Target Pattern
1 人非人 = 彼ら 彼=人非人

Grammar

 

Lexical Slots Conceptual Domain
A Target
B Source

 

Preceding Morpheme Following Usage
1 A B は-既出のものに関する判断の主題
2 B の[ようではなかった] の-「ようだ」「ごとし」で受ける場合
3 B [の]ようで[はなかった] 様-類似-連用形
4 B [のようで]は[なかった] は-接続詞の強調
5 B [のようでは]なかっ[た] ない(ない)
6 B [のようではなかっ]た た-過去-終止形

Pragmatics

Category Effect
含意法 (implication) 空爆の警報が解除されたことを、声を張り上げて方々に知らせて回ったという警官たちのここに至るまでの行為を推定させる。
誇張法 (hyperbole) 一般的な「人間の声」を参照させることで、警官たちのつぶれた声の異常さに際立ちを与える。

最終更新: 2024/01/26 12:13 (外部編集)