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くびき語法 (zeugma)

以前のリビジョンの文書です


くびき語法

Hypernyms
Synonyms 兼用法, zeugma, syllepsis
Hyponym
Definition

くびき語法 (zeugma) は、広義では、並立された複数の語句に対して単一の語句を用いる表現 (Lanham 1991: 159)。狭義のくびき語法は、単一の語句を並立された複数の語句に対して用いるもののうち、どちらか一方の関係では文字通りではない意味を補って解釈する必要があり、くびき表現が二重の意味を担う表現 (石橋 1973: 1010)。(1) に、狭義のくびき語法の例を示す。

  • (1) 遠慮しているうちに、もてなした人の心も、料理も冷めて、不味くなったものを食わねばならぬ。(北大路魯山人『魯山人味道』: 330)
  • (2) もてなした人の心も冷めて、料理も冷めてしまった。

述部「冷めてしまった」が並立された2つの主部「人の心も」と「料理も」に対して用いられている。(1) の主部の並立は、(2) のように2つの節の並立に展開することでパラフレーズできる。共通の述部をR、2つの主部を生起順序にしたがって W1, W2 とすると、この展開関係は R(W1/W2) > R(W1)/R(W2) のように表記できる (スラッシュは並立関係を示す) 。(1)(2) では、W1は「もてなした人の心」、W2は「料理」であり、Rは「冷めて」である。Lausberg (1963: tr192-199; trは邦訳書のページ数を示す) は、この共通する語句 R を「括弧の外に出し」ただ1つで済ませてしまうという点に、くびき語法一般の特徴づけを見いだしている。 R を「くびき表現」と呼ぶ (小松原 2019) 。

Prototype, Schema, and Extension

くびき表現の多義性は、概念メタファーや概念メトニミーで関連づけられていることが多い。例えば「見事な入れ墨をもつ籠を選んで乗る」は、籠と、籠をかつぐ人との概念メトニミーを反映する。

Functions

くびき表現の多義性から、ダブル・ミーニングの効果が生じる。

連結語(くびき表現)は、異なる文脈をつなぐ役割を担うため、異なる2つの意味を同時に表す。この点で、一種の兼用法であると言える。例えば「匂いと音を立てる」では、「立てる」が多義的になる。

ユーモアとして用いられる事例は、ことば遊びの一種であるとも言える。

Examples
最終更新: 2020/02/06 15:49