ex:a1171

「彼は悲しい喜びの中に菩提樹の念珠をつまぐりながら」

「彼は悲しい喜びの中に菩提樹の念珠をつまぐりながら」

Page Type Example
Example ID a1171
Author 芥川龍之介
Piece 「枯野抄」
Reference 『芥川龍之介』
Pages in Reference 307

Text

丈艸(じょうそう)のこの安らかな心もちは、久しく芭蕉の人格的圧力の桎梏に、空しく屈していた彼の自由な精神が、その本来の力を以て、漸く手足を伸ばそうとする、解放の喜びだったのである。彼はこの恍惚たる悲しい喜びの中に、菩提樹の念珠をつまぐりながら、周囲にすすりなく門弟たちも、眼底を払って去った如く、唇頭にかすかな笑を浮べて、恭々しく、臨終の芭蕉に礼拝した。

Context Focus Standard Context
悲しい () 喜び

Rhetoric
Semantics

Source Relation Target Pattern
1 悲しい ←→ 喜ばしい 悲しい<-->楽しい

Grammar

Construction
Mapping Type

 

Lexical Slots Conceptual Domain

 

Preceding Morpheme Following Usage

Pragmatics

Category Effect
撞着語法・対義結合・オクシモロン (oxymoron) 芭蕉の臨終という「悲しい」出来事が丈艸にとって「解放の喜び」でもあるため、一つの出来事について「悲しい」と「喜ばしい」という二面性を表している。

最終更新: 2024/01/26 12:13 (外部編集)