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「始終、いぢめられてゐる犬は、たまに肉を貰つても容易によりつかない。」

以前のリビジョンの文書です


lv3-「始終、いぢめられてゐる犬は、たまに肉を貰つても容易によりつかない。」

Text

「『大夫殿は、芋粥に飽かれた事がないさうな。』 五位の語が完(おわ)らない中に、誰かが、嘲笑つた。錆のある、鷹揚な、武人らしい声である。五位は、猫背の首を挙げて、臆病らしく、その人の方を見た。声の主は、その頃同じ基経の恪勤(かくごん)になつてゐた、民部卿(みんぶきょう)時長の子藤原利仁である。肩幅の広い、身長(みのたけ)の群を抜いた逞しい大男で、これは、焼栗を噛みながら、黒酒(くろき)の杯を重ねてゐた。もう大分酔がまはつてゐるらしい。『お気の毒な事ぢやの。』利仁は、五位が顔を挙げたのを見ると、軽蔑と憐憫とを一つにしたやうな声で、語を継いだ。『お望みなら、利仁がお飽かせ申さう。』 始終、いぢめられてゐる犬は、たまに肉を貰つても容易によりつかない。五位は、例の笑ふのか、泣くのか、わからないやうな笑顔をして、利仁の顔と、空の椀とを等分に見比べてゐた。」(芥川龍之介「芋粥」: 59)

Context Focus Standard Context
始終、いぢめられてゐる犬は、たまに肉を貰つても容易によりつかない (虐められている五位は芋粥をもらっても喜ばない)
  • 直前に「五位は、依然として周囲の軽蔑の中に、犬のやうな生活を続けて行かなければならなかつた。」とある。その後、いじめられている犬を助けようとするエピソードが挿入されている。
Conceptual Mappings
Source Relation Target Pattern
= 人=動物
= 人=動物
Figurative Construction
Construction
Mapping Schema
Functional Type
Rhetorical Effects
最終更新: 2019/08/27 16:34