ex:a0170

「夫は黴(かび)の中で一番下劣なやつ」

「夫は黴(かび)の中で一番下劣なやつ」

Page Type Example
Example ID a0170
Author 中島敦
Piece 「夫婦」
Reference 『中島敦』
Pages in Reference 222

Text

貞淑な妻を裏切った不信な夫は奸悪な海蛇だ。海鼠の腹から生れた怪物だ。腐木に湧く毒茸。正覚坊の排泄物。黴(かび)の中で一番下劣な奴。下痢をした猿。羽の抜けた禿翡翠(かわせみ)。

Context Focus Standard Context
黴の中で一番下劣なやつ

  • 繰り返しなので「だ」が省略されている。
  • 「〜は」という提題部分は省略されている。

Rhetoric
Semantics

Source Relation Target Pattern
1 かび = 夫=菌

Grammar

Construction A-BはC-D
Mapping Type 概念メタファー

 

Lexical Slots Conceptual Domain
A Target
B Target
C Source
D Source

 

Preceding Morpheme Following Usage
1 A - B 統語関係
2 B D は-一般的事物に対する判断の主題
3 C - D 統語関係

Pragmatics

Category Effect
誇張法 (hyperbole) 妻を裏切った夫は低劣であるという評価を背景とした罵倒の一部として、黴という迷惑な事物を引き合いに出し、その中でも最も下劣であると指定を加えることで、当該の夫は価値がなく不快であるという感情を鋭く感じさせる。
人物描写 (description of a character) 一連の比喩によって、「不信な夫」の下劣さを描いている。
評価 (evaluation) 一連の比喩によって夫に対する否定的評価を示している。
過大誇張 (auxesis) 黴のたとえが、妻の夫への罵倒の強さを増幅させる。
漸層法・クライマックス (climax) 比喩の列挙が進むにしがって否定的評価がより強く感じられる。

最終更新: 2024/01/26 12:13 (外部編集)