目次

「処女の純潔の卑小さなどは泡沫のごとき虚しい幻像にすぎない」

Page Type Example
Example ID a1573
Author 坂口安吾
Piece 「堕落論」
Reference 『坂口安吾』
Pages in Reference 225

Text

節婦は二夫に見えず、忠臣は二君に仕えず、と規約を制定してみても人間の転落は防ぎ得ず、よしんば処女を刺し殺してその純潔を保たしめることに成功しても、堕落の平凡な跫音(あしおと)、ただ打ちよせる波のようなその当然な跫音に気づくとき、人為の卑小さ、人為によって保ち得た処女の純潔の卑小さなどは泡沫のごとき虚しい幻像にすぎないことを見出さずにいられない。

Context Focus Standard Context
泡沫 (処女の純潔)

Rhetoric

Semantics

Source Relation Target Pattern
1 泡沫 = 純潔 純潔=泡

Grammar

 

Lexical Slots Conceptual Domain
A Target
B Source
C Elaboration
D Elaboration

 

Preceding Morpheme Following Usage
1 A など[は] D など-軽しめて扱う
2 A [など]は D は-既出のものに関する判断の主題
3 B の[ごとき] D の-「ようだ」「ごとし」で受ける場合
4 B [の]ごとき D ごとし-類似-連体形
5 C - D 統語関係

Pragmatics

Category Effect
イメジャリー・イメージ (imagery) 脆い事物の代表である泡のイメージを用いて、処女が良い、二夫にまみえずという貞節の観念が、戦後の混乱期においてその脆さを露呈していることを示している。