目次

「それが『ろおれんぞ』と睦じうするさまは、とんと鳩になづむ荒鷲のやうであつた」

Page Type Example
Example ID a0726
Author 芥川龍之介
Piece 「奉教人の死」
Reference 『芥川龍之介』
Pages in Reference 191

Text

『ろおれんぞ』は、顔かたちが玉のやうに清らかであつたに、声ざまも女のやうに優しかつたれば、一しほ人々のあはれみを惹いたのでござらう。中でもこの国の『いるまん』に『しめおん』と申したは、『ろおれんぞ』を弟のやうにもてなし、『えけれしや』の出入りにも、必仲よう手を組み合せて居つた。この『しめおん』は、元さる大名に仕へた、槍一すぢの家がらなものぢや。(……)それが『ろおれんぞ』と睦じうするさまは、とんと鳩になづむ荒鷲のやうであつたとも申さうか。

Context Focus Standard Context
鳩になづむ荒鷲 「しめおん」が「ろおれんぞ」と睦じうするさま

Rhetoric

Semantics

Grammar

 

Lexical Slots Conceptual Domain
A Target
B Source

 

Preceding Morpheme Following Usage
1 A は[とんと] B は-既出のものに関する判断の主題
2 A [は]とんと B 少しも(すこしも)
3 B の[やうであった] の-「ようだ」「ごとし」で受ける場合
4 B [の]やうで[あった] 様-類似-連用形
5 B [のやうで]あった ある(ある)

Pragmatics

Category Effect
アナロジー・類推 (analogy) 相反する性質を持った動物の睦み合いのイメージによって、柔弱な「ろおれんぞ」と武人の「しめおん」が仲睦まじい様子であることを表現する。
対照法・対照 (antithesis) 「ろおれんぞ」をその弱々しさから鳩に比し、「しめおん」をその強さから荒鷲に比することで、相反する性質を持った動物のイメージによって対照的に描写する。