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「薄白い雲が瞬く間に峯巒(ほうらん)を蝕み、巌を蝕み、松を蝕み」

Page Type Example
Example ID a0377
Author 幸田露伴
Piece 「観画談」
Reference 『幸田露伴』
Pages in Reference 107

Text

渓の上手の方を見あげると、薄白い雲がずんずんと押して来て、瞬く間に峯巒(ほうらん)を蝕み、巌を蝕み、松を蝕み、忽ちもう対岸の高い巌壁をも絵心にんで、好い景色を見せてくれるのは好かったが、その雲が今開いてさしかざした蝙蝠傘(こうもり)の上にまで蔽いかぶさったかと思うほど低く這下って来ると、堪らない、ザアッという本降りになって、林木(りんぼく)も声を合せて、何の事はないこの山中に入って来た他国者をいじめでもするように襲った。

Context Focus Standard Context
雲が峯巒を 蝕み (覆い被さり)

Rhetoric

Semantics

Source Relation Target Pattern
1 むしばむ = 覆う 覆う=むしばむ

Grammar

Construction
Mapping Type

 

Lexical Slots Conceptual Domain

 

Preceding Morpheme Following Usage

Pragmatics

Category Effect
反復法・反復 (repetition) 「蝕み」が一文内で反復して用いられている。それにより、雲の反復した行為のような印象を与え、雲の移動の軌跡を想像しやすくする。
自然描写 (description of nature) あたかも大量の虫に一斉に食われてしまったように思われるほど、薄白い雲に覆われてその場の様々な地形が瞬く間に見えなくなってしまったことが表現されている。
活喩 (prosopopeia) 「蝕む」という動作動詞を用いることで、雲の行為としてその移動を捉えている。それにより、雲が地形に沿って移動してきたような印象を与える。