目次

「『おや、あそこの店は帽子の廂をやけに下げているぞ』と思わせる」

Page Type Example
Example ID a2364
Author 梶井基次郎
Piece 「檸檬」
Reference 『梶井基次郎』
Pages in Reference 16

Text

もう一つはその家の打ち出した廂(ひさし)なのだが、その廂が眼深に冠った帽子の廂のように——これは形容というよりも、『おや、あそこの店は帽子の廂をやけに下げているぞ』と思わせるほどなので、廂の上はこれも真暗なのだ。

Context Focus Standard Context
これは形容というよりも、『 おや、あそこの店は帽子の廂をやけに下げているぞ () 』と思わせるほど

Rhetoric

Semantics

Source Relation Target Pattern
1 ひさし = つば つば=いらか

Grammar

 

Lexical Slots Conceptual Domain
A Source
B Target
C Elaboration

 

Preceding Morpheme Following Usage
1 A と[思わせるほどなので] C と-内容指定
2 A [と]思わ[せるほどなので] 思う(おもう)
3 A [と思わ]せる[ほどなので] 強いる(しいる)
4 A [と思わせる]ほど[なので] =-ほど(ほど)
5 A [と思わせるほど]な[ので] だ-断定・指定-連体形
6 A [と思わせるほどな]ので ので-原因・理由・根拠・きっかけ
7 B C は-既出のものに関する判断の主題

Pragmatics

Category Effect
擬人法 (personification) 店が帽子をかぶる主体かのように表現され、呼びかける対象とされている。
メタ言語 (metalanguage) 「廂」が単なる言語修飾上の比喩的な形容ではなく、本当にそう思えたということをメタ的に注釈している。
アナロジー・類推 (analogy) 薄く平べったい物がせり出しているという形状的な類似をもとにして、建物の廂を帽子のつばによそえることで、日光を遮るという機能的な類似をも意識させる。それによって廂に隠れる店の暗さを表現する。