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「ずうっと遠くの天の隅のあたりで、三角になってくるりくるりとうごいているように見えた」

Page Type Example
Example ID a2268
Author 宮沢賢治
Piece 「カイロ団長」
Reference 『新編銀河鉄道の夜』
Pages in Reference 61

Text

あまがえるはみなすきとおってまっ青になってしまいました。それはその筈(はず)です。一人九百貫の石なんて、人間でさえ出来るもんじゃありません。ところがあまがえるの目方が何匁あるかと云ったら、たかが八匁か九匁でしょう。それが一日に一人で九百貫の石を運ぶなどはもうみんな考えただけでめまいを起してクゥウ、クゥウと鳴ってばたりばたり倒れてしまったことは全く無理もありません。 とのさまがえるは早速例の鉄の棒を持ち出してあまがえるの頭をコツンコツンと叩いてまわりました。あまがえるはまわりが青くくるくるするように思いながら仕事に出て行きました。お日さまさえ、ずうっと遠くの天の隅のあたりで、三角になってくるりくるりとうごいているように見えたのです。

Context Focus Standard Context
お日さまさえ ずうっと遠くの天の隅のあたりで、三角になってくるりくるりとうごいている (止まっているように見えない)

Rhetoric

Semantics

Source Relation Target Pattern

Grammar

 

Lexical Slots Conceptual Domain
A Target
B Source

 

Preceding Morpheme Following Usage
1 A さえ 見えた さえ-強調的に例示(主格の提題)
2 B ように[見えたのです] 様-類似-連用形
3 B [ように]見え[たのです] 判ずる・判じる(はんずる・はんじる)
4 B [ように見え]た[のです] た-存続-連体形
5 B [ように見えた]の[です] の-「〜のだ」
6 B [ように見えたの]です です-断定(丁寧)-終止形

Pragmatics

Category Effect
主観化 (subjectification) 自らのめまいによる乱れた視覚経験を、視覚の対象である太陽の動きに投影して表現している。
ユーモア (humour) 一般には円形で描かれることの多い太陽を「三角」と形容することで、当該人物の目に映った風景を戯画化する。
心理描写 (psychological-description) 太陽さえも躍動的に動いて見えるという錯覚を描くことで、過酷な仕事によって目が回るような状態であることを示唆している。