目次

「それはどこか熟し切った杏の匂に近いものだった」

Page Type Example
Example ID a1985
Author 芥川龍之介
Piece 「或阿呆の一生」
Reference 『芥川龍之介』
Pages in Reference 421

Text

それはどこか熟し切った杏の匂に近いものだった。彼は焼けあとを歩きながら、かすかにこの匂を感じ、炎天に腐った死骸の匂も存外悪くないと思ったりした。

Context Focus Standard Context
熟し切った杏の匂 (死骸の匂)

Rhetoric

Semantics

Source Relation Target Pattern
1 = 死骸 かばね=梅桜桃李

Grammar

 

Lexical Slots Conceptual Domain
A Target
B Source

 

Preceding Morpheme Following Usage
1 A Bに近い は-既出のものに関する判断の主題
2 どこか 近い ここ(ここ)
3 B に[近いものだった] に-比較の基準
4 B [に]近い[ものだった] 近い(ちかい)
5 B [に近い]もの[だった] 対象(たいしょう)
6 B [に近いもの]だっ[た] だ-断定・指定-連用形
7 B [に近いものだっ]た た-過去-終止形

Pragmatics

Category Effect
描写 (description) 死体が腐乱することで発する不快な甘酸っぱい匂いを描いている。
イメジャリー・イメージ (imagery) 死体が腐乱臭を、甘酸っぱい杏の腐った臭いのイメージによって表現する。
評価 (evaluation) 杏という美味な果物を出すことで、「存外悪くない」という死体への肯定的な評価を導出する。