目次

「云わば恋の創痕(きずあと)の痂(かさぶた)が時節到来して脱(と)れたのだ」

Page Type Example
Example ID a0373
Author 幸田露伴
Piece 「太郎坊」
Reference 『幸田露伴』
Pages in Reference 25-26

Text

ただ一人遺っていた太郎坊は二人の間の秘密をも悉(くわ)しく知っていたが、それも今亡(むな)しくなってしまった。水を指さしてむかしの氷の形を語ったり、空を望んで花の香の行衛を説いたところで、役にも立たぬ詮議というものだ。昔時を繰返して新しく言葉を費したって何になろうか、ハハハハ、笑ってしまうに越したことは無い。云わば恋の創痕(きずあと)の痂(かさぶた)が時節到来して脱(と)れたのだ。

Context Focus Standard Context
恋の創痕の痂が 脱れた (なくなった)

Rhetoric

Semantics

Source Relation Target Pattern
1 取れる = 消える 消える=ちぎれる

Grammar

Construction 言わばA
Mapping Type 概念メタファー

 

Lexical Slots Conceptual Domain
A Source

 

Preceding Morpheme Following Usage
1 いわば A 言わば(いわば)

Pragmatics

Category Effect
縁語・縁装法 (-) 「恋の創痕の痂」を受け、その関連語彙で描写を展開する。
アナロジー・類推 (analogy) 回復の痕跡である瘡蓋が取れると表現することにより、辛い恋の記憶が失われることを具体的な身体経験によって理解可能にさせる。
心理描写 (psychological-description) 辛い恋の記憶が失われることを表現する。