目次

「云わば恋の創痕(きずあと)の痂(かさぶた)が時節到来して脱(と)れたのだ」

Page Type Example
Example ID a0372
Author 幸田露伴
Piece 「太郎坊」
Reference 『幸田露伴』
Pages in Reference 25-26

Text

ただ一人遺っていた太郎坊は二人の間の秘密をも悉(くわ)しく知っていたが、それも今亡(むな)しくなってしまった。水を指さしてむかしの氷の形を語ったり、空を望んで花の香の行衛を説いたところで、役にも立たぬ詮議というものだ。昔時を繰返して新しく言葉を費したって何になろうか、ハハハハ、笑ってしまうに越したことは無い。云わば恋の創痕(きずあと)の痂(かさぶた)が時節到来して脱(と)れたのだ。

Context Focus Standard Context
恋の 創痕の痂 (苦しんだ感情のなごり)

Rhetoric

Semantics

Source Relation Target Pattern
1 傷跡 = 苦しみ 苦しみ=跡
2 かさぶた = 名残 余韻=ふけ

Grammar

Construction
Mapping Type

 

Lexical Slots Conceptual Domain

 

Preceding Morpheme Following Usage

Pragmatics

Category Effect
カテゴリー転換 (-) 心的な喪失を、身体的な傷に喩える慣用的な比喩を用いている。それを拡張することで、心的な回復を傷の回復として捉えるアナロジーを成立させる。
心理描写 (psychological-description) 心的な過程が身体経験のように感じられる。
アナロジー・類推 (analogy) 心的な喪失を、身体的な傷に喩える慣用的な比喩を拡張し、心的な回復を傷の回復として捉えていることで、心理という複雑かつ抽象的なものを身体経験によって具体的に理解可能にする。