目次

「陽気な太鼓の音、笛の音、三味線の音が虱のようにむず痒く刺している」

Page Type Example
Example ID a0043
Author 芥川龍之介
Piece 「ひょっとこ」
Reference 『芥川龍之介』
Pages in Reference 249

Text

お囃子(はやし)をのせたり楽隊をのせたりした船が、橋の下を通ると、橋の上では『わあっ』と云う哂(わら)い声が起る。中には「莫迦(ばか)」と云う声も聞える。橋の上から見ると、川は亜鉛板(とたんいた)のように、白く日を反射して、時々、通りすぎる川蒸汽がその上に眩しい横波の鍍金(めっき)をかけている。その滑(なめらか)な水面を、陽気な太鼓の音、笛の音、三味線の音がのようにむず痒く刺している。

Context Focus Standard Context
陽気な太鼓の音、笛の音、三味線の音 のようにむず痒く刺している

Rhetoric

Semantics

Source Relation Target Pattern
1 = 音=蚊

Grammar

Construction AをBがCのようにD
Mapping Type 概念メタファー

 

Lexical Slots Conceptual Domain
A Target
B Target
C Source
D Source

 

Preceding Morpheme Following Usage
1 A D を-目的・目標(他動詞)
2 B D が-主語
3 C の[ように] D の-「ようだ」「ごとし」で受ける場合
4 C [の]ように D 様-類似-連用形

Pragmatics

Category Effect
共感覚表現・共感覚的比喩 (synesthesia) 橋の上からでは、水上の船上で行われている楽器の演奏音が明瞭ではなくもどかしく聞こえる聴覚的経験を、虱にくわれたかゆみのもどかしさの触覚的経験を想起させることで表現する。