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「その下らない奴は悲鳴をあげた」

Page Type Example
Example ID a2426
Author 梶井基次郎
Piece 「愛撫」
Reference 『梶井基次郎』
Pages in Reference 38

Text

そんなわけで、耳を引っ張られることに関しては、猫はいたって平気だ。それでは、圧迫に対してはどうかというと、これも指でつまむくらいでは、いくら強くしても痛がらない。さきほどの客のように抓(つね)って見たところで、ごく稀(まれ)にしか悲鳴を発しないのである。こんなところから、猫の耳は不死身のような疑いを受け、ひいては『切符切り』の危険にも曝さらされるのであるが、ある日、私は猫と遊んでいる最中に、とうとうその耳を噛かんでしまったのである。これが私の発見だったのである。噛まれるや否や、その下らない奴は、直ちに悲鳴をあげた。私の古い空想はその場で壊れてしまった。猫は耳を噛まれるのが一番痛いのである。悲鳴は最も微(かす)かなところからはじまる。だんだん強くするほど、だんだん強く鳴く。Crescendo のうまく出る――なんだか木管楽器のような気がする。

Context Focus Standard Context
その 下らない奴 は…悲鳴をあげた

Rhetoric

Semantics

Source Relation Target Pattern
1 やつ > 人間>マングース

Grammar

Construction
Mapping Type

 

Lexical Slots Conceptual Domain

 

Preceding Morpheme Following Usage

Pragmatics

Category Effect
換称 (antonomasia) 猫のことを自分より下等な生物だと考えていることが暗示される。