目次

「ちょうどそれに似た孤独感が遂に突然の烈しさで私を捕えた」

Page Type Example
Example ID a2408
Author 梶井基次郎
Piece 「器楽的幻覚」
Reference 『梶井基次郎』
Pages in Reference 33

Text

読者は幼時こんな悪戯をしたことはないか。それは人びとの喧噪のなかに囲まれているとき、両方の耳に指で栓をしてそれを開けたり閉じたりするのである。するとグワウッ——グワウッ——という喧噪の断続とともに人びとの顔がみな無意味に見えてゆく。人びとは誰もそんなことを知らず、またそんななかに陥っている自分に気がつかない。——ちょうどそれに似た孤独感が遂に突然の烈しさで私を捕えた。

Context Focus Standard Context
それ[=悪戯] () に似た孤独感

Rhetoric

Semantics

Source Relation Target Pattern

Grammar

 

Lexical Slots Conceptual Domain
A Source
B Target

 

Preceding Morpheme Following Usage
1 ちょうど 似た ちょうど(ちょうど)
2 A に[似た] B に-比較の基準
3 A [に]似[た] B 同じゅうする(おなじゅうする)
4 A [に似]た B た-存続-連体形

Pragmatics

Category Effect
心理描写 (psychological-description) 喧噪の中で感じる孤独感を表現する。
奇想 (conceit) 耳を開けて閉じてを繰り返すという反復動作を行うことで音の出入へと注意が向き、外界への視覚的な注意が薄れ、さらにそのような視覚と聴覚の逆転を認識しているものは自分自身のみであるという、自分独自の特殊な体験を提示することで、当該人物が感じている言語化の難しい孤独感を表現する。