目次

「そこに滲み込んだ不思議な影の痕を撫でる」

Page Type Example
Example ID a2196
Author 梶井基次郎
Piece 「冬の日」
Reference 『梶井基次郎』
Pages in Reference 299

Text

冬陽は郵便受のなかへまで射しこむ。路上のどんな小さな石粒も一つ一つ影を持っていて、見ていると、それがみな埃及(エジプト)のピラミッドのような巨大(コロッサール)な悲しみを浮かべている。――低地を距てた洋館には、その時刻、並んだ蒼桐(あおぎり)の幽霊のような影が写っていた。向日性を持った、もやしのように蒼白い堯(たかし)の触手は、不知不識(しらずしらず)その灰色した木造家屋の方へ伸びて行って、そこに滲み込んだ不思議な影の痕を撫でるのであった。

Context Focus Standard Context
滲み込んだ (映った)

Rhetoric

Semantics

Source Relation Target Pattern
1 染みる = 映る 映える=染みる

Grammar

Construction
Mapping Type

 

Lexical Slots Conceptual Domain

 

Preceding Morpheme Following Usage

Pragmatics

Category Effect
心理描写 (psychological-description) 全くの薄闇のなかで洋館の壁に映る蒼桐の影が、尭にはあたかもそこに痕となってしっかりと残っているかのように感じられた、という主観的認識が表現されている。
カテゴリー転換 (-) 影という実体のない現象に、繊維や固形物への浸透という液体の特性を付与する。