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「本はおのづからもの憂い影の中に沈みはじめた」

Page Type Example
Example ID a1965
Author 芥川龍之介
Piece 「或阿呆の一生」
Reference 『芥川龍之介』
Pages in Reference 400

Text

そのうちに日の暮は迫り出した。しかし彼は熱心に本の背文字を読みつづけた。そこに並んでゐるのは本といふよりも寧むしろ世紀末それ自身だつた。ニイチエ、ヴエルレエン、ゴンクウル兄弟、ダスタエフスキイ、ハウプトマン、フロオベエル、……彼は薄暗がりと戦ひながら、彼等の名前を数へて行つた。が、本はおのづからもの憂い影の中に沈みはじめた。

Context Focus Standard Context
もの憂い (暗い)

Rhetoric

Semantics

Source Relation Target Pattern
1 物憂い = 暗い 暗い=沈痛

Grammar

Construction
Mapping Type

 

Lexical Slots Conceptual Domain

 

Preceding Morpheme Following Usage

Pragmatics

Category Effect
心理描写 (psychological-description) 実際の日没に並行して変化する「彼」の心情を巧みに描いている。
共感覚表現・共感覚的比喩 (synesthesia) 「暗」という視覚の感覚から連想される「物憂い」という感情を修飾語として用いる。