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「世界に暖かな風が吹いた」

Page Type Example
Example ID a1912
Author 夏目漱石
Piece 「思い出すことなど」
Reference 『夏目漱石』
Pages in Reference 390

Text

『安心して療養せよ』と云う電報が満洲から、血を吐いた翌日に来た。思いがけない知己(ちき)や朋友が代る代る枕元(まくらもと)に来た。あるものは鹿児島から来た。あるものは山形から来た。またあるものは眼の前に逼(せま)る結婚を延期して来た。余はこれらの人に、どうして来たと聞いた。彼等は皆新聞で余の病気を知って来たと云った。仰向(あおむ)けに寝た余は、天井を見つめながら、世の人は皆自分より親切なものだと思った。住すみ悪(にく)いとのみ観じた世界にたちまち暖かな風が吹いた

Context Focus Standard Context
世界に 暖かな風が吹いた 人の心の温かさを感じた

Rhetoric

Semantics

Grammar

Construction
Mapping Type

 

Lexical Slots Conceptual Domain

 

Preceding Morpheme Following Usage

Pragmatics

Category Effect
イメジャリー・イメージ (imagery) 暖かな風が吹いた時に感じられる知覚的な心地よさ喚起し、病床に臥せる自分のもとに知己や朋友が次々と訪ねてきてくれたことによって感じた人の暖かさを身体的に想起させる。
明晰 (clarity) 病床に臥せる自分のもとに知己や朋友が次々と訪ねてきてくれたことによって感じた人の暖かさを、暖かな風が吹いた時に感じられる知覚的な心地よさを引き合いに出すことで、分かりやすく表現する。
アナロジー・類推 (analogy) 暖かい人たちと接することで、自らの心が暖かくなったという印象がある。
心理描写 (psychological-description) 暖かな風の心地よさを引き合いに出し、病床に臥せる自分のもとに知己や朋友が次々と訪ねてきてくれたことによる心情の変化を描いている。