目次

「人種が違うのである」

Page Type Example
Example ID a1831
Author 坂口安吾
Piece 「湯の町エレジー」
Reference 『坂口安吾』
Pages in Reference 378-379

Text

二人は同じ人かも知れないが、銀座で酔ッ払っている時と、ドテラの着流しで温泉街を歩いている時は、人種が違うのである。温泉客というものには個性がない。銀座の酔っ払いは女を見るに恋人という考えを忘れていないが、温泉客は十把一とからげにパンパンがあるばかりで、恋人を探すような誠意はない。完全に生活圏を出外れて、一種の痴呆状態であり、無誠意の状態でもある。

Context Focus Standard Context
銀座で酔ッ払っている時と、ドテラの着流しで温泉街を歩いている時は 人種 (気分) が違う

Rhetoric

Semantics

Source Relation Target Pattern
1 人種 = 気分 気持ち=人種

Grammar

Construction
Mapping Type

 

Lexical Slots Conceptual Domain

 

Preceding Morpheme Following Usage

Pragmatics

Category Effect
対照法・対照 (antithesis) 「人種」の違いという個人の差異を越えて人間として出自自体が異なるものとして捉えることで、銀座で酩酊している姿と温泉街を漫歩する姿のギャップが甚だしいことを表現する。
誇張法 (hyperbole) 二つの場面に身を置いている際の気分や雰囲気が、あたかもその人の恒常的な性質そのものすら異なっていると見えるほど、大きく違っているという印象を与える。
人物描写 (description of a character) 銀座で酩酊している姿と温泉街を漫歩する姿との対比をつうじて、当該人物の人となりを描いている。