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「女中共は半可通の粋好みだから悪評は極上品で」

Page Type Example
Example ID a1771
Author 坂口安吾
Piece 「金銭無情」
Reference 『坂口安吾』
Pages in Reference 296

Text

富子の母親にはお金持の旦那があって金に不自由がないから、娘を芸者に一稼ぎなどという考えはなく、然るべき男と結婚させてと大いに高い望みをかけている。だから四十男の貧乏な哲学者など話の外だと思っており、無口で陰鬱で大酒のみで礼儀作法を心得ず、社交性がみじんもなくて、おまけに風采はあがらない。一つも取柄というものがないから頭から罵倒する。山奥から来て花柳地(かりゅうち)に住みついた女中共は半可通の粋好みだから悪評は決定的の極上品で、土の中からぬきたてのゴボウみたいだと言う。なるほど、うまい。全く孤影悄然(こえいしょうぜん)、挨拶一つ言わず、頭をペコリとも下げないから土だらけのゴボウのようだ。

Context Focus Standard Context
悪評は 極上品 (非常に手厳しいもの)

Rhetoric

Semantics

Source Relation Target Pattern
1 極上品 = 悪評 高評=珍品
2 よい ←→ 悪い よい<-->悪い

Grammar

Construction
Mapping Type

 

Lexical Slots Conceptual Domain

 

Preceding Morpheme Following Usage

Pragmatics

Category Effect
人物描写 (description of a character) 四十男の貧乏な哲学者に対する批評が、他に類を見ないほど厳しいことから、女中達の批評好きな性格が暗示されている。
皮肉・反語・アイロニー (irony) 通常は好意的な評価を述べる「極上」ということばの使用に、清人への評価の低さに対する皮肉な態度が込められている。