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「彼の一切の思念が凍り」

Page Type Example
Example ID a1710
Author 坂口安吾
Piece 「白痴」
Reference 『坂口安吾』
Pages in Reference 270

Text

彼には忘れ得ぬ二つの白痴の顔があった。街角を曲る時だの、会社の階段を登る時だの、電車の人ごみを脱けでる時だの、はからざる随所に二つの顔をふと思いだし、そのたびに彼の一切の思念が凍り、そして一瞬の逆上が絶望的に凍りついているのであった。

Context Focus Standard Context
思念が 凍り (止まり)

Rhetoric

Semantics

Source Relation Target Pattern
1 = 思考 考え=水
2 凍る = 止まる 止まる=凍る

Grammar

Construction
Mapping Type

 

Lexical Slots Conceptual Domain

 

Preceding Morpheme Following Usage

Pragmatics

Category Effect
イメジャリー・イメージ (imagery) 自由に運動する水が凍って一切の動きがなくなる様になぞらえることで、彼の思考が完全に停止してしまった印象を与える。
擬物法・結晶法 (hypostatization) 水から氷への変化になぞらえることで、思考という働きが物理的な実体であるという印象を与える。
誇張法 (hyperbole) 氷という固体への変化になぞらえることで、彼の思考停止の完全性に際立ちを与える。
心理描写 (psychological-description) 「白痴の顔」を不意に思い出したときの彼の心もちを描いている。