目次

「捨てられた紙屑を見るほどの関心しか示さない」

Page Type Example
Example ID a1560
Author 坂口安吾
Piece 「堕落論」
Reference 『坂口安吾』
Pages in Reference 223

Text

行く者、帰る者、罹災者達の蜿蜿(えんえん)たる流れがまことにただ無心の流れのごとくに死体をすりぬけて行き交い、路上の鮮血にも気づく者すら居らず、たまさか気づく者があっても、捨てられた紙屑を見るほどの関心しか示さない。

Context Focus Standard Context
捨てられた紙屑を見る (路上の鮮血に気づく)

Rhetoric

Semantics

Source Relation Target Pattern
1 紙くず = 鮮血 血=くず

Grammar

 

Lexical Slots Conceptual Domain
A Elaboration
B Source
C Elaboration

 

Preceding Morpheme Following Usage
1 A ても ても-衝突するような結果
2 B ほど[の関心しか] C ほど-動作や状態の程度
3 B [ほど]の[関心しか] C の-なんらかの関係(人間関係・数量関係・空間関係etc.)の基点
4 B [ほどの]関心[しか] C 注目(ちゅうもく)
5 B [ほどの関心]しか C しか-否定(主格以外)

Pragmatics

Category Effect
評価 (evaluation) 大空襲後の惨状にあって、路上に広がった血痕という通常ならば人の注意を引く現象が、当たり前のこととして卑俗化されている。
イメジャリー・イメージ (imagery) 路上の鮮血がまったく目立たないことを、路上に捨てられた紙屑という注意を引かない事物のイメージを用いて表す。