目次

「温顔がニコニコと仰有る」

Page Type Example
Example ID a1490
Author 坂口安吾
Piece 「勉強記」
Reference 『坂口安吾』
Pages in Reference 156-157

Text

すなわち、肉体は常に温顔をたたえ、さながら春の風、梅花咲くあのやわらかな春風をたたえていらっしゃる。そうして、お別れしてしまうまで、肉体の温顔が、ただ、目の前いっぱいに立ちふさがっているのである。そうして、肉体の温顔が、ニコニコと、きさくに語って下さるのである。ナニ、美女もただの白骨でな、と、肉体の温顔がニコニコと仰有る。

Context Focus Standard Context
温顔 (温顔をもった肉体の高僧) がニコニコと仰有る

Rhetoric

Semantics

Source Relation Target Pattern
1 温顔 > 高僧 温顔>僧俗

Grammar

Construction
Mapping Type

 

Lexical Slots Conceptual Domain

 

Preceding Morpheme Following Usage

Pragmatics

Category Effect
図地構成 (figure-ground organization) 視界に顔しか映っていないことを表現している。
心理描写 (psychological-description) 精神的な存在であるはずの高僧に会ったときでさえ、肉体的なものに注意をひかれてしまう主人公の心持ちを表現している。
畳語法 (epizeuxis) 「肉体の温顔」という言い方を反復することで、高僧のにこやかな笑顔の印象を、そこはかとなく恐ろしさすら覚えるほどに強める。