目次

「鈴の音は腰のあたりに湧き出して」

Page Type Example
Example ID a1203
Author 梶井基次郎
Piece 「ある心の風景」
Reference 『梶井基次郎』
Pages in Reference 294-295

Text

そんな時朝鮮の鈴は、喬(たかし)の心を顫わせて鳴った。ある時は、喬の現身は道の上に失われ鈴の音だけが町を過るかと思われた。またある時それは腰のあたりに湧き出して、彼の身体の内部へ流れ入る澄み透った溪流のように思えた。それは身体を流れめぐって、病気に汚れた彼の血を、洗い清めてくれるのだ。

Context Focus Standard Context
腰のあたりに 湧き出して ()

Rhetoric

Semantics

Source Relation Target Pattern
1 わき出す = 聞こえる きく=わく

Grammar

Construction
Mapping Type

 

Lexical Slots Conceptual Domain

 

Preceding Morpheme Following Usage

Pragmatics

Category Effect
イメジャリー・イメージ (imagery) 湧き出す水のイメージによって、鈴の音のもつ力動性が捉えられている。
擬物法・結晶法 (hypostatization) 湧き出す水という具体物として捉えることで、鈴の音が実際に喬の身体に影響を与える力を持っていることが示唆される。
前景化 (foregrounding) 喬が身につけている鈴が鳴らす音を水に比すことで、その音の澄んだ様子を強調し、同時にそれと対比される喬の病をも強調する。
対照法・対照 (antithesis) 渓流や鈴の澄んでいる様子と、「病気に汚れた彼の血」を対比させる。