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「遠い山からそれを見ると、勤勉な蟻に酷似していた」

Page Type Example
Example ID a0824
Author 坂口安吾
Piece 「村のひと騒ぎ」
Reference 『坂口安吾』
Pages in Reference 29

Text

自分一人の心臓を(いや、胃袋だ!)おさえきれずにいた幾百万の(とは言え本当は人口二百三十六名である)村人は、血走った眼に時雨の糸が殴り込むのを決して構おうとせずに、息をつめて知識の殿堂へ殺到した。遠い山からそれを見ると、勤勉な蟻——物を考えたり声を出したりしないところの、あの怱忙な行列に酷似していた。

Context Focus Standard Context
勤勉な蟻 (村人)

Rhetoric

Semantics

Source Relation Target Pattern
1 あり = 村人 都民=はち

Grammar

 

Lexical Slots Conceptual Domain
A Source
B Elaboration
C Source

 

Preceding Morpheme Following Usage
1 A - B 統語関係
2 B ところ[の] C 所(ところ)
3 B [ところ]の C の-同格(同じ内容)
4 C に[酷似していた] に-比較の基準
5 C [に]酷似[していた] 類似(るいじ)
6 C [に酷似]し[ていた] する(する)
7 C [に酷似し]て[いた] て-補助用言に連なる用法
8 C [に酷似して]い[た] 居る(いる)
9 C [に酷似してい]た た-過去-終止形

Pragmatics

Category Effect
明晰 (clarity) 離れた場所から眺めたときの人々の様子を、小ささの代表である蟻に結びつけて分かりやすく表現する。
イメジャリー・イメージ (imagery) 蟻が群のなかで整然と行列し、個々の意志を主張しないことを想起させることで、パニックになった村人たちが個々の意志がなく一堂に学校へと押し寄せる様子を描写する。
対照法・対照 (antithesis) 蟻は社会的な生物として整然と動いているが、当該の人々はパニック状態であるという対比性をも持つ。
人物描写 (description of a character) 蟻になぞらえることで、遠い山から見た人々の様子を描いている。