======= 「雌は『ゲ・ゲ』とうなずいている」 ====== |< 60% 30%>| ^ Page Type | Example | ^ Example ID | a1264 | ^ Author | [[name:kaji00030127]] | ^ Piece | [[piece:kaji000009987527-koub]] | ^ Reference | [[reference:kaji000009987527]] | ^ Pages in Reference | 68 | == Text == 「私の眼の下にはこのとき一匹の雄[=河鹿蛙]がいた。そして彼もやはりその合唱の波のなかに漂いながら、ある間(ま)をおいては彼の喉を震わせていたのである。私は彼の相手がどこにいるのだろうかと捜して見た。流れを距(へだ)てて一尺ばかり離れた石の蔭(かげ)におとなしく控えている一匹がいる。どうもそれらしい。しばらく見ているうちに私はそれが雄の鳴くたびに『ゲ・ゲ』と満足気な声で受け答えをするのを発見した。そのうちに雄の声はだんだん冴えて来た。ひたむきに鳴くのが私の胸へも応(こた)えるほどになって来た。しばらくすると彼はまた突然に合唱のリズムを紊(みだ)しはじめた。鳴く間がたんだん迫って来たのである。もちろん雌は「ゲ・ゲ」と__うなずいている__。しかしこれは声の振わないせいか雄の熱情的なのに比べて少し呑気(のんき)に見える。しかし今に何事かなくてはならない。私はその時の来るのを待っていた。すると、案の定、雄はその烈(はげ)しい鳴き方をひたと鳴きやめたと思う間に、するすると石を下りて水を渡りはじめた。このときその可憐(かれん)な風情ほど私を感動させたものはなかった。彼が水の上を雌に求め寄ってゆく、それは人間の子供が母親を見つけて甘え泣きに泣きながら駆け寄って行くときと少しも変ったことはない。「ギョ・ギョ・ギョ・ギョ」と鳴きながら泳いで行くのである。こんな一心にも可憐な求愛があるものだろうか。それには私はすっかりあてられてしまったのである。 |<80%>| ^ Context ^ Focus ^ Standard ^ Context | | 雌は『ゲ・ゲ』と | うなずいている | (鳴いている) | | * この小説では、人間は病に冒されており死を連想させる。そのためか、人間は家などで換喩的に指示される一方、生を感じさせる生物は人間に喩えられる。 * うなずきながら鳴いた、という解釈もできる。 == Rhetoric == |<60% 30%>| ^ ^ Category | ^ 1 | [[category:metaphor]] | ^ 2 | [[category:personification]] | == Semantics == |<80% 10%>| ^ ^ Source ^ Relation ^ Target ^ Pattern | ^ 1 | [[source:2.3390-4|うなずく]] | = | [[target:2.3031-3|鳴く]] | [[mapping:metaphor--2.3390-4--2.3031-3]] | == Grammar == |<60% 30%>| ^ Construction | | ^ Mapping Type | |   |<60% 30%>| ^ Lexical Slots ^ Conceptual Domain |   |<80% 10%>| ^ ^ Preceding ^ Morpheme ^ Following ^ Usage ^ == Pragmatics == |< 80% 30%>| ^ Category ^ Effect | | [[category:personification]] | 動物が鳴くさまをうなずいていると表すことで、人間的な親しみを生み出している。 | {{tag> index:ex name:kaji00030127 piece:kaji000009987527-koub reference:kaji000009987527 category:metaphor category:personification mapping:metaphor--2.3390-4--2.3031-3 source:2.3390-4 target:2.3031-3 annotator_example:A-Tamaru annotator_semantics:T-Komatsubara annotator_pragmatics:R-Kikuchi annotator_pragmatics:H-Matsuura }}