======= 「始終、いぢめられてゐる犬は、たまに肉を貰つても容易によりつかない。」 ====== |< 60% 30%>| ^ Page Type | Example | ^ Example ID | a0347 | ^ Author | [[name:akut00001509]] | ^ Piece | [[piece:akut000009208889-imog]] | ^ Reference | [[reference:akut000009208889]] | ^ Pages in Reference | 59 | == Text == 「『大夫殿は、芋粥に飽かれた事がないさうな。』 五位の語が完(おわ)らない中に、誰かが、嘲笑つた。錆のある、鷹揚な、武人らしい声である。五位は、猫背の首を挙げて、臆病らしく、その人の方を見た。声の主は、その頃同じ基経の恪勤(かくごん)になつてゐた、民部卿(みんぶきょう)時長の子藤原利仁である。肩幅の広い、身長(みのたけ)の群を抜いた逞しい大男で、これは、焼栗を噛みながら、黒酒(くろき)の杯を重ねてゐた。もう大分酔がまはつてゐるらしい。『お気の毒な事ぢやの。』利仁は、五位が顔を挙げたのを見ると、軽蔑と憐憫とを一つにしたやうな声で、語を継いだ。『お望みなら、利仁がお飽かせ申さう。』 __始終、いぢめられてゐる犬は、たまに肉を貰つても容易によりつかない__。五位は、例の笑ふのか、泣くのか、わからないやうな笑顔をして、利仁の顔と、空の椀とを等分に見比べてゐた。 |<80%>| ^ Context ^ Focus ^ Standard ^ Context | | | 始終、いぢめられてゐる犬は、たまに肉を貰つても容易によりつかない | (虐められている五位は芋粥をもらっても喜ばない) | | * 直前に「五位は、依然として周囲の軽蔑の中に、犬のやうな生活を続けて行かなければならなかつた。」とある。その後、いじめられている犬を助けようとするエピソードが挿入されている。 == Rhetoric == |<60% 30%>| ^ ^ Category | ^ 1 | [[category:metaphor]] | ^ 2 | [[category:allegory]] | ^ 3 | [[category:description-of-a-character]] | ^ 4 | [[category:imagery]] | == Semantics == |<80% 10%>| ^ ^ Source ^ Relation ^ Target ^ Pattern | ^ 1 | [[source:1.5501-4|犬]] | = | [[target:1.2040-2|男]] | [[mapping:metaphor--1.5501-4--1.2040-2]] | ^ 2 | [[source:1.4323-8|肉]] | = | [[target:1.4310-7|粥]] | [[mapping:metaphor--1.4323-8--1.4310-7]] | == Grammar == |<60% 30%>| ^ Construction | | ^ Mapping Type | |   |<60% 30%>| ^ Lexical Slots ^ Conceptual Domain |   |<80% 10%>| ^ ^ Preceding ^ Morpheme ^ Following ^ Usage ^ == Pragmatics == |< 80% 30%>| ^ Category ^ Effect | | [[category:allegory]] | 直前に「五位は、依然として周囲の軽蔑の中に、犬のやうな生活を続けて行かなければならなかつた。」とある。その後、いじめられている犬を助けようとするエピソードが挿入されている。 | | [[category:description-of-a-character]] | 犬と肉の関係を基盤として、五位と利仁の言葉との関係を理解させる表現。犬であっても始終いじめられていれば臆病になり、与えられた肉にすらすぐには寄り付かなくなってしまう。これと同様に、周囲から粗雑な扱いを受け続けた五位は、すっかり臆病な性格になっており、それ故に利仁に言葉をかけてもらったものの、どうたち振る舞えばよいのかわからず、すぐには反応を返せなくなってしまっている、ということがわかる。 | | [[category:imagery]] | ここでのアレゴリーによって五位が、そのエピソードに出てくる犬のイメージと重ね合わせられる。それにより、人と言葉の関係という抽象的な事柄を具体的に理解させる。 | {{tag> index:ex name:akut00001509 piece:akut000009208889-imog reference:akut000009208889 category:metaphor category:allegory category:description-of-a-character category:imagery mapping:metaphor--1.5501-4--1.2040-2 mapping:metaphor--1.4323-8--1.4310-7 source:1.5501-4 source:1.4323-8 target:1.2040-2 target:1.4310-7 annotator_example:Y-Kasuga annotator_semantics:M-Sato annotator_pragmatics:R-Kikuchi annotator_pragmatics:T-Komatsubara annotator_pragmatics:Y-Hirakawa }}